2025年7月20日(日)
「偵察者の報告」 永松 博
民数記13章1~3、17~29節(聖書協会共同訳)
「7月5日に日本で大地震が起こる」とのデマ、噂が、SNSを中心に生活する子どもたちの間で広がり、社会にも少なからず影響をもたらしました。情報源を辿ったところ、日本の漫画や、香港の有名風水師の予言など、根拠なきものだったそうです。気象庁長官は「人間は見えないものに不安を覚え、その対象について何か断定的に述べることに、すがる傾向があろうかと思う」と指摘していました。新聞で紹介されていた対策は、SNSから離れることや、危うい情報に惑わされぬよう地震への理解を深めることなどが挙げられていました。SNSは、「怖い!やばい!」というような感情的投稿が広がりやすいものです。
参院選でも、デマやうそが流布している点には注意しなければなりません。ナチス・ドイツの重鎮だったヘルマン・ゲーリングの言葉を思い出します。彼は、戦後刑務所に、米国の心理学者グスタフ・ギルバートに対して次のように語ったと言います。「もちろん、人々は戦争を欲してはいない…しかし、結局、政策を決定し、常に単純に、人々をそれに巻き込んでいくのは、国の指導者なのだ。たとえそれが民主主義であろうと、…そうなのだ。…人々は常に指導者の命令に従わされるのだ。それは簡単だ。彼らにこう言えば良いだけだ。彼らは攻撃されていると言い、平和主義者は愛国心を欠いていて、国家を危険に晒していると非難しさえすればいい。それはどの国においても同じように効果を現す」(G.M.Gilbert『Nuremberg Diary』DaCapoPress,1995, unabridged republication of the edition first published in 1947, with the addition of 24 photos from the 1961 edition, p.278-279 より引用。訳:李明生さん)。きょうの聖書箇所において、カナンの地偵察を命じられた12人は、どのような内容を報告したでしょうか。一つは、ぶどう、ざくろ、いちじくなど、その地の果実を取って来て「乳と蜜の流れる地」だと報告しました(「27私たちは、あなたがお遣わしになった地に行って来ました。そこはまことに乳と蜜の流れる地でした。これがそこの果実です」)。これは、証拠に基づいた正しい報告だと言えそうです。一方、カナンの地の住民に関する報告は、多くが「31あの民に向かって上ることなどできません」というものでした。また、偵察者たちはカナンの地について「32悪い噂を広め」たことも書かれています。イスラエルの民は、この噂に影響されました。神の約束を忘れ、不平を言い、偵察者のうち少数意見だったヨシュアとカレブを殺そうとさえしました。デマや噂に煽られ、絡めとられていくのではなく、神の約束に耳を澄ませ、約束を信じ、神の国を生きていきたいのです。