担っていこう、必要なことを

2024年3月10日の礼拝より
「担っていこう、必要なことを」 永松 博
ヨハネによる福音書16章25~33節

2011 年 3 月 11 日午後 2 時 46 分、東北地方太平洋沖地震と東京電力福島第一原
子力発電所事故による人災「東日本大震災」から、まもなく 13 年を数えます。わた
したちはあの出来事を覚え、キリスト者として「災間」(東日本大震災後に社会学者
の仁平典宏さんが提唱した概念)を生きましょう。わたしたちは「東日本大震災後」
を生きているのではなく、次に来るであろう大災害の前を、つまり災害後と次なる災
害前との「間」を生きています。事実この間、能登半島地震も発生した通り、この社
会ではこれからもあちこちで巨大地震が起こり得るし、その度に原発事故の危険性
がつきまとうことを忘れることなく祈り行動せねばならないのではないでしょうか。
震災間 13 年、この社会は何を選択してきたでしょう。東日本大震災の翌年には、
脱原発を求める世論を背景に、原発の規制強化、再稼働ゼロの方針でした。しかし、
政権交代以降は原発再稼働へ転換しました(現在再稼働している原子力発電所はいず
れも西日本で 12 基※今年 1/24 時点・経産省資源エネルギー庁。脱炭素社会を目指す政
府は 2030 年までに原子力の割合を現在の 5%程度から 20~22%に拡大させる方針
で東京電力が管理する柏崎刈羽原発含めた 5 基が再稼働を目指しており、東日本大
震災被災地にある女川原発は今年 9 月頃に再稼働の方針)。また、原発再稼働に関す
る世論も昨年初めて賛成が多数派となりました(東日本大震災以降、反対が 5~6 割
で推移するも、昨年は「賛成」51%、「反対」42% ※2023 年朝日世論調査)。
このような災間にあっても、みことばは、祈り成す術もないわたしたちを、それで
も信じて、必要な使命を担い生きるよう押し出します。「あなたがたは、この世では
なやみがある。しかし、勇気を出しなさい。わたしはすでに世に勝っている」(16 章
33 節)1980 年代の韓国民主化運動の中で、キリスト教の救いに根差し非暴力抵抗
運動を実践した咸錫憲(ハムソクホン)もまた、このみことばを 1982 年クエーカー
の聖書集会において「私たちの目標は永遠のものである」と語り、「私たちの戦いは
既に勝っている戦い」であると苦難の中にいる人びとを励ましました。また、イエス
が十字架を背負ったのと同じように、聖書の言葉を信じて、世界史における私たちの
使命を担って行くことを呼びかけ、このような使命(それはなやみを伴う)を受け入
れてこそ、私たちに主イエスが語ってくださった勝利があることを語っています。わ
たしたちも「あなたがたは憂えているが、その憂いは喜びに変るであろう」(16 章
20 節)とのみことばを信じ、いま必要な使命を担って生きましょう

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